学問の世界 Academic World ―情報学―

学問の世界 Academic World ―情報学―

2018年2月22日(木)京都大学にて開催された全分野結集型シンポジウム『学問の世界 The Academic World』。科研費分科全79分野のうち75分野の研究者が結集、お互いの研究について紹介し合い、各分科ごとに細分化された研究では「全体のほんの一部」しか見えなくなっているかもしれない「真理の探究」について語り合いました。
参加された方々のご発言、コメントを、分野別にご紹介します(1分科1~2名)。

情報学

4/75分科、4名

≫もくじページに戻る

情報学基礎

1.所属
  • 研究所(国立)
論文 2.ページ数
  • 計算理論系で8~10ページ
  • 機械学習系で12~16ページ
3.著者数
  • 4人程度
  • 計算理論系では10件に1件程度が単著(1人)
4.年間本数(平均)
  • 2本。共著も含めれば5本程度
5.著者名掲載ルール
  • ABC順
  • 書いた人・証明した人・協力した人の順
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 論文
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 情報処理学会:20,000
  • 人工知能学会:4,000
  • 電子情報通信学会:20,000
  • オペレーションズリサーチ学会:2,000
8.学会誌の発行頻度
  • 月1(年間12)
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 発表15~20分、質問5分(質問時間いっぱいまで発表する人が多いです)
国際会議 10.意外?な開催場所
  • プーケット
11.服装
  • アロハシャツ~ワイシャツ。スーツは浮く
12.国際会議での発表
  • 評価される(論文よりも国際会議での発表の方が採択されにくい)
13.一般的な研究費
  • 300万円

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

  • カラテオドリの定理

 
15.仲の良い分野は?

  • どの分科とも仲良くできる。

 
16.仲の悪い分野は?

  • 寧ろ分野内の方が仲が悪い。ディープラーニング万歳の人は、他の手法が嫌いだったりする。
  • 効率化の意義を、他の分野の人に理解されにくいことがある。自然科学の某えらい先生に、計算の効率化なんてしないで、お金を掛けてきちんと計算しろと言われた。効率化しても同じ結果は出るし、研究費が少ない人のことも考えて欲しい。

 
17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • 頭のいい人たちが難しくて格好良いことをしているところ
  • 頭脳のアスリートが集まって、理論の方向で人間の限界に挑戦しているところ

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

  • 人間が確認・認識できることの限界の解明
  • 科学でいうところの予測は、過去のパターンを認識し、現在に合わせること。未来が過去の繰り返しであれば予測できる
  • いろいろな人にいろいろな目標があって、多様性の高い状態になったとき、その中で共有できる部分を探して行くとどうしても「人」や「社会」に関わるものになる。目標を抽象化して、意識・意味のレベルでの共通項や分類を構築できないか。好奇心や探求心についてはどうか。

 
19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • 数理の心理のかけらをつかんだとき
  • 何らかの壁を破って、向こう側がぱっと見えたとき

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • 今まで分野の人が考えてこなかった着目点を持ち、なんらかのしっかりとした意義を持ち、そういった問題や手法を、理論あるいは実験的な根拠を持って、コンセプトとして提案できる論文。

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • 人類の英知を切り拓く「力」を圧倒的に持っている人

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

  • 「やってみたらこうなった」と報告しているだけの研究
  • サラミ論文(1つの結果を薄くスライスしてあちこちに投稿するもの)
  • この人、請負の仕事として研究しているな…という感じの、本人の深い興味から来ていない論文はつまらない

 
23.ここが変だよ! 私の分野

  • 代数ばかり
  • アメリカで流行っているものが正義
  • 応用がたくさんあると書かれている論文ほど、応用できそうな気配がない
  • 簡単で役に立つことを目指しているはずが、問題を解くにあたって難しい話を入れてしまい使いにくくなることも少なくない

 
24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

  • 「本当は応用なんてないんでしょ?」
  • 「で、何の役に立つの?」
  • 「アルゴリズムが速くなると、コンピュータが売れなくなるんだよね」とPCメーカーの人に言われたことがある

 
25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

  • ものごとは数理的に記述できる
  • 実社会に応用がある
  • データは意味を内包する

 
26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • いろいろあるけど、つきつめると「人の好奇心を満足させられたとき」かな
  • 数で理が解明できたとき

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • 本質は非可算で無限にある。どこをどう見たら「記述できる」と思うのか
  • むしろ逆で、記述できないことだらけの中で、記述できることの範囲を少しずつ広げているのが科学だと思う
  • 何かいいことが分かったら、人に言葉で伝えたい

 
28. 今日の感想を一言

  • 多人数向け相手につぶやくと、どうしても発言内容がすごく一般的、抽象的になり、個人の個性から来る強みが弱くなる感じはあるかも。逆に、どんどん出てくる感じはいいかと
  • 会場からの発言にレスポンスできないのがちょっとまどろっこしい。しかし、コメントを返せるようにしても、たぶん、そこを誰も見ないので。全員の視点を一カ所に集めるメリットと、いくつかのグループに分割する良さ、どう両面を使用するかが鍵
  • 立て付けとして、もう少し参加感を高める仕掛けはできないか
  • オンラインで参加してもいいんじゃない?

 

計算基盤

1.所属
  • 大学(国立)
論文 2.ページ数
  • 10ページ
3.著者数
  • 4~6人
4.年間本数(平均)
  • 2~3本
  • 2ページ程度の短いものなら無限に書いている
5.著者名掲載ルール
  • 貢献度順ということになっている
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 論文
  • 書籍は研究業績にならないかな
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 可視化情報学会:約1,000
  • 日本シミュレーション学会:2,000
8.学会誌の発行頻度
  • 月1回のところも、年1回のところもある
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 発表15分、質問5分
国際会議 10.意外?な開催場所
  • ここ(註:京都大学吉田キャンパス)
11.服装
  • 工学寄りだとスーツが多い
  • 情報寄りだとカジュアル
12.国際会議での発表
  • 評価して欲しい!(論文よりも国際会議での発表に採択される方が難しい。トップカンファレンスではレビュアーが5人くらいつく)
13.一般的な研究費
  • 100万円以上

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

15.仲の良い分野は?

  • 境界分野なのでどの分野とも仲良くできる

 
16.仲の悪い分野は?

  • 数値やデータを扱わない分野とは相性が悪いかもしれない

 
17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • いろんなモノを計算できるようにする

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • 人間とコンピュータが力を合わせて初めてできるような計算を成し遂げたとき

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • アルゴリズム(理論)も実装(プログラミング)も両方頑張っている論文
  • 実験の再現性がきちんと示されている論文(当たり前のはずだが、できていないものが多いかもしれない)

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • 生涯現役の人

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

  • 良く出回っているソフトウェア未満のコンセプト、性能

 
23.ここが変だよ! 私の分野

  • 毎年パソコンを買う

 
24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

  • 「2位じゃダメなんでしょうか」(冗談です)

 
25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

  • 精度(解像度)を上げれば上げるほど嬉しい

 
26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • 技術的な制約を取り払っていくこと

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • できないかもしれないけど、できるべきであるという信念はある
  • 数式から世界を生み出すことができる
  • 全てを記述できても学問はある。シンプルなモデルから起こされる複雑な現象もあるので。

28.今日の感想を一言

  • 良い社会、電源とインターネット

 

人間情報学

1.所属
  • 大学(私立)
論文 2.ページ数
  • 10~30ページくらい
3.著者数
  • 3人程度(学生、研究室付き助教、ボス)
4.年間本数(平均)
5.著者名掲載ルール
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 論文
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 認知科学会:1,000人強
8.学会誌の発行頻度
  • 季刊~月刊
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 発表10~25分、質問5~10分
国際会議 10.意外?な開催場所
  • アイスランド。エクスカーションで乗馬があった
11.服装
  • そこそこカジュアル。学生はスーツ
12.国際会議での発表
  • 論文のジャーナル掲載とほぼ同等に評価される
13.一般的な研究費
  • 科研費が取れている人なら100万円

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

  • ヒューリスティクス。人間情報学の中でさえ意味が全然違う

 
15.仲の良い分野は?

  • 心理学・言語学・社会学・人類学 など

 
16.仲の悪い分野は?

  • 情報の基盤技術系(ハードウェア・ネットワーク・データベース・OS)とは仲が良くないかもしれない

 
17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • 人間のしくみと情報のしくみを知って人間を強くする

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

  • 分野の中の間隔だと、人間のしくみ=自然
  • 「みんなちがってたいへんだ」(平田オリザ)が多様性に対する構え方として最もしっくりくる言葉

 
19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • あらゆる研究に関わる作業をしていてフロー状態に入れたとき
  • 日常生活の中に研究にできそうな問いを見つけたとき

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • 人間と情報の間に自然な境界線が見える論文
  • 学際領域の場合異分野協働が当たり前なので、その協働がかみ合っているかどうかまでが論文の良さの基準

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • 思いもよらない視点から人間と情報の自然な境界線を炙り出せる研究者

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

  • データを大量に取ったことを自慢して、感覚や先入観だらけのデータの解釈を押しつける研究

 
23.ここが変だよ! 私の分野

  • 認知科学の場合、学会に出るメンバーと科研費が取れるメンバーが一致しない

 
24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

  • 「ドラえもんっていつできるの?」
  • 「実用化できないシステムを量産して何になるの?」

 
25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

  • 人間はロボットで完璧に再現できない

 
26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • 人間と情報の間に自然な境界線が見えるシステムができているとき。実用段階のものだとなお良い

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • 語り得ぬものについては沈黙しなければならない(ウィトゲンシュタイン)
  • 記号やモデルに還元できて良い形でプレゼンできている研究程、社会の中では過剰にウケが良い気がする
  • 記号やモデルに還元してボトムアップに組み合わせれば世界の再構築が可能、と暗黙のうちに考えている人が多いのかもしれない。マクロに世界を見る研究も重要だと思うのだが

 
28.今日の感想を一言

  • 分野間の相互作用の場づくり自体は重要だが,そこで投げっぱなしにならないようにするにはどうすればよいかが課題のような.既存の分野の枠組みでない何かをより具体化(体系化?)できないものかと

 

情報学フロンティア

1.所属
  • 大学(私立)
論文 2.ページ数
  • 標準8ページ(きちんと査読に通るように書くと、実際は10~12ページくらいになることが多い)
3.著者数
  • 2~4人くらい
4.年間本数(平均)
  • 博士課程の頃、ジャーナル論文1本、国際会議論文2本を目標にせよと指導された(あくまで目標)
5.著者名掲載ルール
  • 貢献順。実際書いた人がfirst author、一番えらい人がlast author
6.書籍と論文、評価されるのは
  • 論文。書籍はあまり関係ない
学会 7.おもな所属学会と所属人数
  • 電子情報通信学会
  • 情報処理学会
  • 人工知能学会
  • 人数はよく分からないが数万人規模?
8.学会誌の発行頻度
  • 月1(年間12)が多いかな
  • 最近ではオンライン化された雑誌が多く、たんすのこやしにすらならない
9.口頭発表時の発表時間と質問時間
  • 全国大会:発表15~20分、質問3~5分
  • 研究会:発表25~35分、質問5~10分
  • 最近はポスター発表が増えてきた
国際会議 10.意外?な開催場所
11.服装
  • スーツを着るとだいたい浮く
12.国際会議での発表
  • 評価される(人事関係は他分野の人が多いため、あまり評価されない場合もある)
13.一般的な研究費
  • 研究室を持っているか、自分ひとりで研究しているかによってかなり違う
  • 研究室を持っている人で300万~500万くらいかな

14.他の分野の研究者には意味不明?! な専門用語は?

15.仲の良い分野は?

16.仲の悪い分野は?

17.中学生に自分の分野を説明するならどう話す?

  • コンピュータの研究、プログラミングの研究

 
18.あなたの分野の目指すところは? キャッチフレーズ、うたい文句など

  • コンピュータを使って新しいエンターテインメントを作ったり、新しい芸術鑑賞をできるようにしたり、そういう意味でのQoLを向上させる

 
19.研究していて面白い! と思う瞬間は?

  • 自分で実装したシステムやソフトウェアを動かしてみて、実際に使ってみて「これいいじゃん!」となったとき

 
20.これはすごい! いい論文だ! と思うのはどんな論文?

  • ゴール、ゴールを実現するための課題、課題を解決するためのアイディア。この3つに筋が通っている論文
  • どんなに技術的にレベルが高くても、やったことだけ書いてあって、どうしてそれをやるのか、どうしてその手法でやるのかが論じられていない論文が一番困る

 
21.この人はすごい! と思うのはどんな研究者?

  • 議論の質が高い人
  • 論文数などはあまり気にしない

 
22.これはクソ研究だわ…と思うのはどんな研究?

  • 研究の目的(言ってること)と作ったシステムの内容(やってること)が噛み合っていない研究

 
23.ここが変だよ! 私の分野

24.それを聞いたらおしまいよ…という禁句は何?

25.分野内で暗黙的に前提になっていること、そこを疑うと分野が成り立たなくなることは?

26.より良い社会、より良い人生を分野の言葉で語るなら?

  • 研究者の数だけ、ターゲットユーザの数だけ「より良い」の基準がある。だから、研究に多様性が生まれる(だから、研究テーマがもろ被りしてレッドオーシャンになることもあまりない)

 
27.記号・言語・数式などで世界の本質は記述できる?

  • 世界の本質ってなんだろう?

 
28.今日の感想を一言

The Academic World 結集全分野

総合系:情報学環境学・総合領域(1) (2) (3)
人文社会系:総合人文社会・人文学(1) (2)・社会科学(1) (2)
理工系:総合理工数物系科学化学・工学(1) (2)
生物系:総合生物生物学農学・医歯薬学(1) (2)

Related post

研究はゲーム レーザー核融合の研究者

研究はゲーム レーザー核融合の研究者

藤岡先生がどうして核融合反応の研究をすることになったのか?どういった思いで日々研究されているかのか?などの研究への愛を伺っていきます。始まりは、小学生の時に経験した衝撃の出来事、そして高校生の時に見たNHKの番組でした。いったい何があったのか?どんな番組を見たのか?ぜひ、動画でご確認ください!
太陽で起きている反応を発電に利用する!? レーザー核融合反応の研究

太陽で起きている反応を発電に利用する!? レーザー核融合反応の研究

太陽がどうして輝いているのか知っていますか?何かが太陽の中で燃えている?いえ、そうではありません。太陽の中では水素と水素が合体し、ヘリウムが生れる反応が起きており、この反応のおかげで太陽は輝いていて「核融合反応」と呼ばれています。核融合反応の実用化に向け、日々、研究されている大阪大学 レーザー科学研究所 藤岡慎介教授にお話を伺っていきます。
宇宙線研究はすごい楽しい!宇宙線研究者の研究への愛

宇宙線研究はすごい楽しい!宇宙線研究者の研究への愛

前編では、大阪公立大学院 理学研究科物理学専攻で宇宙線の研究をされている藤井俊博先生に、宇宙線の中でも、ものすごく大きなエネルギーを持つ、謎に満ち溢れた最高エネルギー宇宙線の研究のお話を教えてもらいました。後編では、藤井先生がどうして宇宙に興味を持ったのか?日々どんな思いで研究をされているか伺っていきます。

返信を残す

あなたのメールアドレスが公開されることはありません. 必須フィールドは、マークされています *