タブーに挑戦し続けるKYであれ。パネリスト、河田聡氏(オープンフォーラム・議論予測2)

タブーに挑戦し続けるKYであれ。パネリスト、河田聡氏(オープンフォーラム・議論予測2)

さて、このシリーズではオープンフォーラムの登場人物を紹介しながら、オープンフォーラム当日の議論がどう展開されるのかを編集部が独断と偏見で勝手に予測していきます。今日はパネリストの一人である、大阪大学特別教授で応用物理学会会長を務められている河田聡(かわた さとし)氏。河田氏のウェブサイトの「今月のメッセージ」記事から、今回のオープンフォーラムのテーマに関連する言葉をピックアップして、当日の議論を【勝手に】予測してみます。
10月25日(土)に迫ったサイエンストークス・オープンフォーラム2014、参加登録はお済みですか? 文字どおりオープンなフォーラムであるこのイベントには「単なる観客」は一人もいません。イベントの目的は、「勝手に第5期科学技術基本計画みんなで作っちゃいました!」の提言案完成に向けて、参加者一人ひとりがアイディアや事例、異論・反論を語り合い、研究をめぐる立場は違うが日本の研究への思いは同じ人々が一緒になってつくり上げる共同作業。あなたの一言が、日本の科学技術の方向性を変えるかも知れません。参加登録お待ちしてます!
kawata.jpg河田聡氏/Satoshi Kawata
1951年大阪府生まれ。大阪大学特別教授。研究分野は分光学・工学、ナノテク・ナノサイエンス、バイオフォトニクス。レーザー顕微鏡製造会社「ナノトフォン株式会社」を創設し、現在会長。研究者としては江崎玲於奈賞、日本分光学会学術賞、紫綬褒章、文部科学大臣表彰、島津賞、市村学術賞、ダビンチ優秀賞、日本IBM科学賞など多数。研究成果はギネスブック、教科書にも掲載。著書多数。科学技術の問題について精力的に発言。

異端妄説を語るのが研究者である。タブーに挑戦し続けるKYであれ

河田氏がどんな議論を展開されるのか、記事の引用から読み解いてみましょう。著名な研究者でありながら、起業家・経営者でもある河田氏。日本の研究と企業、両方に足りないのは異端妄説を語り、タブーな議論に挑戦する姿勢であり、それを許す日本の社会文化だと語ります。
「私は講演でよく、「異端妄説」とか「Think Different」とか「それでも地球は回っている」をキーワードに話をします。世の中で当たり前と信じられていること、事実だと信じられていることを否定し、新しい理論や実験結果を示せる人が科学者です、と説明します。「異端妄説」を語れなければ科学者ではありません。先生は教科書を教えますが、科学者は教科書を書き換えます。教科書に新たなページを書き加えます。」(2014年6月のメッセージ)
「会議では他にもいろんなタブーにチャレンジしました。(中略)さて、私の講演は失敗したように思います。会議はタブーに挑戦する状況にはなかったようです。この問題を深く掘り下げる議論や批判は出ず、コメントはモデレートなものでした。」
「タイトルのもう一つのキーワードの「KY」は若者言葉です。空気読まない、の略です。私は「KY」が今の日本の最大の問題だと思っています。(略)「KY」とは、タブーに近づかないという文化です。シリアスな話題をみんなの前でしないという自己規制文化です。そして本当の問題は、これが若者文化ではなくて日本文化であることです。高齢者も若者もみな「KY」です。「タブー」に挑戦することは「KY」です。辛い話、嫌な話を避け続ける限り、日本は弱体化し続けるのではないかと心配します。」(2014年6月のメッセージ)
河田氏自身、様々な会議の場でタブーを破り、いわゆるKY(空気・読まない)問題提起をあえてすることで日本の議論によくある「それは言わない約束でしょう」に真っ向から挑戦をしている方だということが記事からわかります。たとえ真理を語ろうと、場の空気に逆らった発言は「異端」と取られがちな日本では、新しい発想は生まれにくい。空気に打ち勝ってタブーを破るKYになるべきだというメッセージです。
サイエンストークスのイベントでは、オープニングで恒例の「サイエンストークス7箇条」を読み上げます。その中には「出入り自由・発言自由」「立場や慣習からの自由」という2つのルールが入っています。これは「好きなことをなんでも発言していいよー、でもポジショントークはNGですよー」という意味。日本人はとかく場の空気に合わせて河田氏のいう「モデレート」なコメントをしがちですが、それでは議論が本質に迫りません。個人が参加する何のしがらみもないフォーラムだからこそ、何でも本音で語れる場にしたい。異論がなければ面白くないですよね!どんな異論が飛び出すのか。刺激的な議論が期待されます。

「人材」も「育成」も好きになれない。「ヒト」は自分で学び、育つもの

若手研究者の活躍を問題にした「Empowerment of Young Generation:若手が活躍できる環境づくり」も今回の議論のテーマ。テーマリーダーの駒井氏は、「全ての垣根を取り払い、時間をかけていろいろな課題を発掘し、取組む事のできる未来志向の集団の創設。現代的な組織構造(ハブ構造)により、個々人が「主役感」を持ち個人、組織の活動に集中して取組むことのできる”Powerful”ではなく”Effective”かつ”Creative”な集団を目指す。」 という目標を掲げています。
また、隠岐氏がリーダーを務める人材に関するもう一つのテーマ、「Diversity:オモシロイ人が集まる、育つ環境づくり」もまた、ダイバースな研究人材が育つ環境づくりを目標にしています。

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河田氏は若手の人材育成とそのための環境整備についてはどのような見解をお持ちなのでしょうか。
「人材育成」という言葉も流行っています。しかし、私は人は育成されるものではないと考えます。育成をするのは「稲」とか「牛」です。「ヒト」は自分で学び、育ちます。国にやれることがあるとしたら、それを辛抱強く待つことだけです。若者が自ら育つことを年長者が辛抱強く待つ、という環境を作ることです。工業製品や農産物のように規格どおりの「ヒト」を生産し品質管理をするのではなく、それぞれが個性あふれた多様性のある「ひと」に育つ環境を整えることであろうと思います。「ひと」をまるで材料のように呼ぶ「人材」という言葉は私は好きになれません。まるで豚や野菜のように扱う「育成」という言葉も好きになれません。今年の正月のメッセージで書いたスマイルズの言葉をもう一度、採録します。
「他の誰かに手をさしのべることは、たとえそれがどんなに良いことであったとしても、本人の自己解決への気概を奪ってしまう」
「社会制度にできることがあるとすれば、人々を放っておくことぐらいであろう」」(2014年6月のメッセージ)
人材育成って言葉、気軽によく使いますが、そう言われてみるとずいぶん失礼な言葉なのかも。特に研究者は自由で独創的なアイディアを持ったクリエイティヴな人たちであってしかるべきで、そんなThink Differentがデフォルトであるべき研究者の「人材」を「育成」するなんて国にできるんでしょうかね?不思議に思えてきました。ヒトなんて放っとけば育つ、って一見過激な発言のようですが、駒井氏がゴールに掲げている「個々人が「主役感」を持ち、個人、組織の活動に集中して取り組むことのできる、”Powerful”ではなく”Effective” かつ”Creative”な集団」のヒントになる発想かもしれません。若手に限りなく自由を与える環境ってどうしたらつくれるのか?当日の議論が楽しみです。

研究不正と研究評価のつながり。論文ではなく人物を評価するしかない

STAP事件で研究不正の問題が大きく世間をにぎわす前の2013年10月~11月にかけて、河田氏は芝エビ偽装表示事件にたとえて研究不正の根本的な問題に研究評価の課題がある点を自身のブログで書いています。オープンフォーラムで取り上げる「Trust: 信頼と支持の獲得」(中村征樹氏)、「Competition & Collaboration:競争と共創の両立できる環境づくり」(宮川剛氏)の2つのテーマがこの議論に絡んでいますので引用してみましょう。

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「捏造とか偽装は、形式主義者に権威を与えたときから生まれるのです。美味しい料理を出してくれるお店、新しい科学を生み出してくれる科学者に対して、数字や形式で評価しようとする限り、捏造は終わることがないでしょう。」
「成果もないのに論文を書くことが要求されると、恐ろしいことにデータを捏造したり盗作するという可能性が生まれるのです。昨今、日本の大学や役所は、毎年毎年、研究者に論文発表を求めます。それに応えなければ契約更新もないという立場の人が増えています。しかし、コンスタントに成果が出るような研究は、大したテーマではありません。」

「世界中のそして日本中の博士号を取得するほぼすべての学生は、学生の間に2,3本の論文を書きます。世界中のそして日本中の教授たちもポスドクたちも、毎年毎年2,3本の論文を書きます。もっとたくさん書く人もいます。たとえ新しい発見や発明ががなくても、論文を書き続けます。 そうしなければ学位が取れず、ポストは見つからず、昇進はできず、予算は獲得できないからです。それならたいしたことのない論文を書けばいいのですが、新規性のない研究は論文として採択されません。そこで、捏造ではないのですが他の人が再現できない論文が生まれるます。たまたま偶然に出た結果、計算だけの結果、模擬実験だけの結果、意味のない結果あるいは解釈が発表されてしまいます。」
「私は、論文の書かれている内容よりも、その論文を書いた人物に注目します。私の分野では時々、1ナノメーター分解能の光学顕微鏡が発表されます。しかしなかなか再現されません。最近も著名な雑誌に0.1ナノメーターの分解能の光学顕微鏡の論文が掲載され、大きな話題となりました。まだ再現はされていません。再現されていない論文を評価するには、書いた人を信じるかどうかになるような気がします。」2013年11月のメッセージ10月のメッセージ
研究評価と論文ねつ造は、切っても切り離せない問題です。「再現性がない」という限りなくグレーに近いものから、明らかにデータをマニピュレートしている黒のものまでスペクトラムがありますが、そもそもなぜ再現性が極めて低い不確実な研究ですら発表してしまわざるをえないのか、その背景に過度なポストや研究費の獲得競争のためにインパクトファクターの高いジャーナルに論文を掲載することや論文発表数といった研究評価指標の歪みが絡んでいます。この問題、最後には論文を「書いた人を信じるかどうかによる」という人物評価に帰着するという河田氏。不正と評価、どちらも根本から改善するヒントになる方法が一つでもディスカッションで見つけられればいいですね。
河田聡氏のプロフィールや記事はこちらのサイトから
サイエンストークス・オープンフォーラムでは、立場や年齢、分野を問わず参加者が誰とでもフラットに議論できる場を用意します。テーマリーダーやパネリストにぜひみなさんのアイディアや意見をぶつけにきませんか?
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