コミュニティの“チャンピオン”になれ

AAAS 国際部長 トレキアン氏特別インタビュー!

コミュニティの“チャンピオン”になれ

AAAS(アメリカ科学振興協会/通称トリプルエーエス)の国際部長トレキアン氏へのインタビューシリーズ。第4回はサイエンストークスを発展、拡大するためのアドバイスをトレキアン氏からいただきました。

氏によると組織の成長の秘訣は新しい事業を求めるコミュニティに積極的に呼びかけ、コネクションを作ること。そうすることでネットワークを活用し、徐々に活動を浸透できるとか。第4話、お楽しみください!

コミュニティの“チャンピオン”になれ


湯浅 ありがとうございました。ではサイエンストークスの目標を実現するためにどのようにしていけば宜しいとお考えですか?今一つの問題として、科学コミュニティからの参加者数の少なさが挙げられます。

トレキアン氏 サイエンストークスの活動は始めてからどのくらいの期間が立ちますか?

湯浅 この取り組みは昨年に始めて、イベントは既に2回行いました。

トレキアン氏 違った価値観を持つ人たちを集めてフォーラムを開くときには、普段考えないような角度から意見が出て、とても価値のある経験ができると思います。

湯浅 その多様性こそ私達が求めているものです。

トレキアン氏 組織を如何に成長させるべきか、とお尋ねいただきましたね。如何なる状況においても新しい組織の規模を拡大することは非常に大きなチャレンジが伴うものかと。特に自分が先駆的な事業を始める場合、新しいことを始めるぞ、大きくするぞ、という興奮が有り余っていますから…(それができないと意気消沈することでしょう)。

ただ、大抵の場合は、人が何かを新しいものを認識するまでには時間がかかります。情報が流通するのにも時間がかかります。私からの最善の提言は、コミュニティの役に立つと感じる事業を行いなさい、そして常にフィードバックを貰いなさい、というものです。

因みにコミュニティのネットワークを活用し、彼らの役に立つ事業を成長させることのできる人を、我々は“チャンピオン”、と呼んでいます。

つまり小さい事業から初めても、コミュニティにとって価値があり、クォリティが高く、且つ現場のニーズに適応した事業を続けたら、後は事業の発展と成長をコミュニティのネットワークに任せる、という方針がベストかもしれませんね。

先ほども述べた通り、AAASは120,000の組織として発足したわけではなく、創設時はその何万分の1の規模でしたから。時間が経過すると組織はに需要が存在する空間に馴染み、徐々に膨らみ、少し縮み、そしてまた新しい取り組みの導入で膨らみ、といった具合に変化します。

私からのアドバイスは、何かを成し遂げたいという強い意志を持つ少数のグループから活動を始め、ニーズに応える形で組織を成長させていき、チャンピオンになることで繋がる人の絶対数を増やしていくことですね。

湯浅 ありがとうございます。そういう意味ではサイエンストークスも今は正しい方向性に進んでいると思います。まず小山田さんがいて、中枢を担うメンバーの方々が数人いますし、それぞれが日本の科学の環境を変革しようと言う情熱を持っています。

今のようなアドバイスはまさに求めていたものでした。先ほどと同じ質問で恐縮ですが、新しい活動にイニシアチブを持つためには、どういう形での活動が望ましいですか。実際大変な仕事ですよね?

トレキアン氏 そうですね。大変です。

湯浅 例え素晴らしいコンセプトとプロジェクトがあるとしても、それを人々に認知させ、参加させるためにはどうするのか?例えばAAASの場合、政府や議会関係者に自分達の活動の重大性を認識させるためにどんなことを行ったのですか?

トレキアン氏 初期の段階で行ったことは、どのような人物がネットワークに所属しているか特定することでした。一体このネットワークの中で、誰が我々の取り組みに興味を抱きそうで、その人物に対してどうやって接触するか、という点に集中しました。

彼らに何かの執筆依頼をするか、或いは直接対談を行うか、といった具合に接点を持つことを意識しました。AAASには長い歴史があり、今では多くの政策関係者が所属しています。そのうち多くの方々は国際関係の中の科学の役割に関連する仕事に情熱を注いでいます。そういう意味では選ぶべきメンバーを集めた、という感じですね。ただし適した人材を集めるのには相当の時間がかかりました。

湯浅 なるほど。

トレキアン氏 この人材集めの段階が一番大変でしたね。

湯浅 今AAASは成長していますか?

トレキアン氏 順調に成長していますよ。いつも規定数以上の論文が届きますし、需要を見ればジャーナルの読者数は常に鰻上りで上がっています。

何も数だけが大切なのではなく、読者層の質と多様性にも注目していますし、更にScienceの読者は一体どんな分野に興味を持つのか、彼らからしてみればその分野に関する新しい知識を得られる媒体であるのか、学びがあるのか、ということにも重きを置いています。

それを確認するためにいつもアンケート調査をやっています。他にも優秀なアドバイザーも何人もいて、個々の専門領域での貴重な意見を提供してくれます。しかしやはりこれだけのことを可能にするのには時間がかかりますし、それぞれの役割に適した人材を必要としますからね。

湯浅 トレキアン氏ご自身は役割上、何に力を注いでいますか?

トレキアン氏 それはその時々によります。私個人は情熱的で優秀なスタッフに恵まれ、組織にとって欠かせない存在の最高経営責任者のサポートも受けてきました。

更に多くの投資をしていただいている家族財団、強い興味を示してくれている取締役会の存在もあり、これら全てのグループがあるからこそ今やっていることが実現できるのです。

しかしまだまだ、幅広い層と接点を設けられると信じています。これからも活動を続けることで一層組織が成長することを望んでいます。

――組織がゼロスタートで継続的に発展するためには既存のネットワークを活用すること。そして重要なのは常に上昇を続けること。

サイエンストークスも社会のニーズを応えられるように成長し続けたいと思います。ご意見、お待ちしています。
[kanren postid=“2877,2746,2859,2872,2882”]

Related post

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議の議員の構成というのは極めて重要です。関連の大臣が入っているので科学技術の政策がいろいろなところで展開され、関連の大臣がみんな入っているということは自ら決めていく。FIRSTは日本が非常に誇るべきシステムです。
日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

サイエンス分野では日本語でしか発見できないことがたくさんあります。日本人の感性と感情に豊かな言葉があって、実はその中で大発見がうまれてきている。基本的な考え方として、ここを抑えておかないとどんなに政策提言をしても世の中は変わりません。
好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

リバネスのモットーは『科学技術の発展と地球貢献を実現する』。小中高校生への「出前実験教室」を中心に、幅広い事業を手がけている企業、その設立者であり代表取締役CEOをつとめる丸幸弘氏にインタビューさせて頂きました。

返信を残す

あなたのメールアドレスが公開されることはありません. 必須フィールドは、マークされています *