「国や大学は何をすべきか? 」

中部大学理事長・飯吉厚夫氏インタビュー(12)(完)

「国や大学は何をすべきか? 」
飯吉厚夫氏インタビューシリーズ12回目!
ついに迎えた飯吉先生のインタビュー最終回。講演を前に、国と大学のとるべき方向性をまとめていただきました。


【湯浅】
 東京大学だけにこれだけお金が集中していても、国の研究力という意味での論文の数やイノベーションの数、論文利用数が伸びていないという状況があります。本当に国全体の研究力を伸ばすには、国なり大学なりが何をやるべきなのでしょうか。

【飯吉】 研究者も多様だから、選択と集中というのはあるレベル以上の話なんですよ。はじめはいろいろなところに可能性を見つけて、あまり区別しないでやったほうがいいのではないかと思いますよ。それぞれの地方、土地によって持つ興味や対象も違いますしね。そういう中から、新しいことが出てくる可能性もあるし。

【湯浅】 多様なところに。

【飯吉】 科研費は今のやり方でいいと思いますよ。ただ、絶対値をもう少し増やしてほしいというのはあるかもしれない。それよりも分配の分布をもう少しすそ野を広げたほうがいいのではないでしょうか?

【湯浅】 そうでしょうね。あと、科研費申請をしても評価の0.1ポイントの差によって落とされてまったくお金がもらえない人もいる。そのシステムを変えて、より多くの人が少しずつでも費用を分け合えるシステムにしたほうががいいんじゃないかという話がありますが。

【飯吉】 今のような話は本来は運営費交付金でやる話なんですよ。運営費交付金というのは最低研究を営むためのお金と考えればね。みんなにそれを薄く配るというのと、それから、少しずつ芽を出してきた人に競争的資金を渡し、その辺から選択と集中と言うかね、そういうものがあってもいいと思いますね。

ビッグ・プロジェクトはいくつもやれませんから、最終的にはやっぱり1つに絞るというところになるんでしょうけど、そのときには競争をかなりフェアにやって、勝つか負けるかの世界。そのくらいの気持ちでやらないと。

【湯浅】 なるほど。薄く広く種をばらまいた上で、伸びてきた研究のうちで競争の上に高額資金をつけるということですね。本日はありがとうございました。当日よろしくお願いいたします!

【飯吉】 はい、よろしくお願いします!

(インタビュー完)

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