「文科省の中から科学技術政策にかかわる醍醐味」

内閣官房健康・医療戦略室 次長・菱山豊氏インタビュー(1)

「文科省の中から科学技術政策にかかわる醍醐味」
今回のScience Talks-ニッポンの研究力を考えるシンポジウム、第1回大会「未来のために今研究費をどう使うか」、次の登壇者インタビューは、菱山豊氏です。
菱山氏は、2007年1月から文部科学省研究振興局ライフサイエンス課長を務め、ヒトiPS細胞研究、脳科学、タンパク質等ライフサイエンス政策に取り組んできました。
その後、文教施設企画部計画課長、科学技術振興機構経営企画部長、研究振興局振興企画課長を務め、現在は、文部科学省 研究振興局 大臣官房審議官をつとめられています。今回のシンポジウムでは役所を離れて有識者の立場からお話をいただきます。


【湯浅】
 菱山さんは文科省で研究推進局、大臣官房審議官というご役職についておられ、ヒトES細胞、ヒトゲノム、疫学、クローン技術等に関する指針作り、ヒトiPS細胞研究、脳科学、タンパク質などのライフサイエンス政策に取り組まれるなど、主にライフサイエンスの分野でご活躍されています。

 

文科省に勤められて政策側からサイエンスの発展にかかわられていますが、ご自身のお仕事をどのように捉えていらっしゃいますか?また、どのような思いで取り組まれているのでしょうか。

【菱山】 ライフサイエンスについての思いを語るように言われれば、本2冊分ぐらいの思いは語ることができると思います。実際に、2冊ほど本も出しています。(笑)

【湯浅】 確かに、出されていますよね。(笑)

【菱山】 ライフサイエンスの政策に取り組む醍醐味は、やはりこの分野の成果が人間の生活の本質にかかわる、すべての人にとって関心が高い健康や病気、クオリティ・オブ・ライフに直結する研究の発展に直接関われるところだと思います。現場の研究者が行う基礎研究をいかにして健康の維持と疾病対策に実用化し社会に役立てていけるか。それを実現させることが、政策に携わる立場の人間の務めです。

【湯浅】 なるほど。

【菱山】 たとえば今ホットなiPS細胞研究とか脳科学研究は、すごく不思議な現象を追う世界で、そのサイエンスとしての不思議の解明は研究者が一生懸命明らかにしているわけですが、このような新しい発見は国の戦略に基づいてなされるわけではなく、研究者の独創性が重要です。自由な発想を大切にすることも政策として重要です。

新しい発見やブレークスルーが発展の元になるわけです。また、その明らかにした科学的発見をどうやって国や社会の発展の役に立てるかということも政府の役割だと思います。

【湯浅】 つまりは、基礎研究で得られた科学的発見や知識と社会をつなげて、国の利益に還元していくお仕事というわけですね。

【菱山】 そうですね。もちろん文科省などといった役所に勤めている私たちは「これがやりたい」と名乗り出て好きな仕事の担当をやれる立場にはいないので、私もたまたま人事異動でライフサイエンス課に配属されたのですが、山中先生のヒトiPS細胞作製の発表の時に重なるなど大変幸運だと思っています。やりがいのある仕事ですし、しっかり実現していきたいですね。

【湯浅】 面白そうなお仕事です。

【菱山】 文科省が考える科学技術イノベーションは中・長期的なプロジェクトです。明日役に立つような開発は企業にがんばってやっていただければいいし、企業こそがイノベーション実現の担い手です。我々文科省は、イノベーションをやはり長いレンジで考えていく必要があります。もちろん個人的には短期的な結果も求められるのも事実ですけれども。

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