東大発ベンチャーで、人と地球を健康にする人々 パネリスト、株式会社ユーグレナ 鈴木健吾氏(オープンフォーラム・議論予測3)

10月25日サイエンストークス・オープンフォーラムの当日の議論がどう展開されるのかを編集部が独断と偏見で【勝手に】予測するこのシリーズ。今回の主役は今話題の東大発バイオテクノロジー企業、株式会社ユーグレナの取締役であり研究開発部長の鈴木健吾(すずき けんご)氏。大学発ベンチャーの数少ない成功例として注目を集める企業のトップ頭脳を、過去のインタビューから覗いて、議論の予測をしてみます。

鈴木氏写真とユーグレナ写真は株式会社ユーグレナ・サイトから抜粋

(株)ユーグレナ 研究開発部長鈴木健吾

鈴木健吾/Kengo Suzuki
株式会社ユーグレナ 取締役 研究開発部長

東京大学、農学部生物システム工学専修を卒業後、2005年に株式会社ユーグレナの取締役に就任。

最近薬局やスーパー、コンビニでも見る「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」の5文字。鈴木氏が取締役を務める株式会社ユーグレナは、2005年に代表取締役社長の出雲氏、出雲氏の後輩で研究開発部長の鈴木氏、クロレラ健康食品販売会社の専務取締役であった福本氏の3名を中心に設立した東京大学発ベンチャー企業。創業当時は東京大学内に研究拠点を持ち、藻の一種ミドリムシ(学名ユーグレナ)を健康食品として販売開始。東証マザーズにも株式上場しました。ミドリムシは食品化、化粧品にとどまらず、バイオジェット燃料の研究開発も行っています。

ミドリムシ、皆さん知ってますよね? 中学の理科で勉強しましたよね。葉緑体を持ち光合成ができる植物としての能力と動物としての運動機能を兼ね備えたハイブリッドな生物で、理科好き仲間にはファンも多かったミドリムシ。まさか青汁ならぬ緑汁として食べられるとは、しかもまさか燃料まで開発できるとは、あの頃は想像もしませんでした。この株式会社ユーグレナという企業がまた大変おもしろい。日本ではいくつか成功例はあるものの、いまいちぱっとしない大学発ベンチャー(おっと、失敬…)の中で、政府も大学も企業も注目する理由は、とにかく「人と地球を健康にしたい」という設立者たちの強い思いと、ミドリムシへの愛と、その可能性を疑わない信念で、あっというまに株式上場にまで企業を押し上げた情熱ではないでしょうか。

“ユーグレナの創業メンバーは出雲氏を含め3名。東大時代からの後輩である鈴木氏と、親が経営するクロレラ健康食品販売会社の専務取締役でありながら参加した福本氏だ。鈴木氏はミドリムシの研究開発に専念し、販売経験が豊富な福本氏は営業に専念し、出雲氏は経営者となった。経営者になる人は、若い頃から起業を目指していた人が多いものだが、出雲氏は「他にできることがなかった」と言うのだ。

「20歳のときからミドリムシの良さを多くの人に知ってもらいたいということだけを考えていて、経営者になりたいとは特段思っていませんでした。私よりも鈴木の方が研究者として何倍も優れていますし、物を販売することにかけては福本の方がはるかに経験豊富で上手なわけです。現在、私を含め社員が70名いますが、それぞれ個人としてリーダーシップを発揮してくれていて、広報も経理も人事もみんな私よりもミドリムシのプロなんですよ」”(biz ocean: ミドリムシが世界を救う!? 株式会社ユーグレナ代表取締役社長 出雲 充 インタビュー)

経営の出雲氏、研究の鈴木氏、マーケティングの福本氏という3本の矢が、ユーグレナ成功の鍵であったよう。産学連携、大学発ベンチャーの成功は、基礎・応用研究力とその目利きとマネジメント力、そして開発した商品の販売ルート確保のためのマーケティング力の3つにかかっていますが、新しい分野を切り開く際に大学・企業どちらにもバランスのとれた人材が揃わないのが大きな課題です。ユーグレナはすべてがそろった稀有な成功例といえるかもしれません。その中で、アカデミアに最も近い立場にいる研究開発部長の鈴木氏は産学連携や日本の研究についてどう考えられているのでしょうか?株式会社リバネスのAgre Garageインタビューから抜粋してみます。

“―事業を進めるにあたって、研究者とのネットワークはどのように開拓されて行ったのでしょうか。

「ユーグレナ研究会という集まりがそもそもあって、その会に所属している研究者のみなさまに協力してもらえたことが非常に大きかったです。最初に大量に培養を行おうというところの考えやアイデアも、そこに所属する先生方に相談して進めてきました。研究会と連携する前から、ユーグレナ研究会の中で食としての利用価値が研究されていたのは、当社としても非常に重要だったと思います。」

また、インタビュー記事「産学官のみちしるべ 東大発ベンチャー 「ユーグレナ」の技術とビジネス展開」でも、鈴木氏はこんなふうに述べています。

「大学との連携の強みは、イニシャルで掛かる研究のためのインフラストラクチャーが、一から始めるより軽微で済むことが挙げられる。当社の研究において経営資源が不足しがちなテーマについて、東京大学とは藻類の中の脂質成分の代謝に関する研究、近畿大学とはユーグレナの遺伝子関連の研究、さらに大阪府立大学とはユーグレナの食品や化粧品としての機能性の研究を共同で進めるなどして、進捗させてきた。(中略)今後は、事業実現のために市場に近い大企業とのパートナーシップを強固にして、大規模に培養を行い実際に燃料化とその効率化を進めることにより、バイオジェット燃料の生産技術を確立することを目標としている。」

研究開発では複数の国立大学との研究連携で頭脳とインフラを共有する一方で、大規模化と市場開拓のために大企業とパートナーを組み収益を上げ、それを更なる研究投資に使って成長する。官からトップダウンで計画的にこんな産学連携プロジェクトや大学発ベンチャーを増やそうやっても、こんな風にフレキシブルでインテリジェントなマネジメントはきっとできないでしょう。大学にも大企業の研究開発部にも真似できない独創性の元は、企業としてやりたいこと、夢を持っているということに尽きるかもしれません。

研究でやりたいことを実現するためには、ユーグレナ社みたいに自分たちで起業したほうが国から研究費をもらうよりも良いのではないか?と考えさせられるケースです。大学にも企業にも、自分の研究を社会に役立てたいと情熱を燃やす研究者はたくさんいるはず。どうしたら思いを持った若手研究者がやりたいことを実現できる環境を作れるのか?オープンフォーラムで、パネリストとしての鈴木氏の意見を伺うのが楽しみです。

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