原山優子議員のプレゼン:第5期科学技術基本計画の現状―サイエンストークス・バー6月6日イベント報告(3)

前回の小山田バーマスターに続きプレゼンをして頂いたのは特別ゲストの内閣府・総合科学技術会議の原山優子議員。原山議員は実際に2016年から施行される第5期科学技術基本計画を作成中。第5期計画の進捗状況や、現場や若手の研究者の皆さんから欲しいインプットについてたくさんお話頂きました。

20分ほどのプレゼンをそのまま動画と記事でまとめました。まだ観ていない方、イベントで観たけれどもう1回おさらいしたい方、必見です。第5期科学技術基本計画の現状についてプレゼンしています。

― 今回のサイエンストークス・バー参加について

この会の趣旨は自由にということなので、私も自由に発言させていただきます。ですから、ここでの発言は議員の誰それの意見としてではなくて、原山優子個人の意見として聞いてくだされば嬉しいです。

第5期科学技術基本計画の作成に実際に入る前なので、今はまだやもやとしている時期なんですけれど、みなさんは新しいプロジェクトで何かやりたいんだけれどまだアイディアが煮詰まっていない時にはどうします?人にぶつけますよね。あるいは本を読んだり資料や文献を集めたり、リサーチしたり。そうしながら作りこんでいく作業の中でもやが晴れていって、何らかの塊が見えてくる。計画を作っているのは役所ですから、何年何月までに作らなければいけないというスケジュールがあり、お尻に火がついているんですね。でも、今はまだもやもやしていい時期であることは確かなので、こういう場で議論させて頂いて皆さんの意見を聞いて、一緒に討論しながら考える場はありがたいと思いますので、今日は引き受けさせていただきました。

― 「総合科学技術・イノベーション会議」への改組・改名の背景

小山田さんのプレゼンでは詳しく触れられなかったことですが、最近、「総合科学技術会議」が「総合科学技術・イノベーション会議」に改組して、名前にイノベーションがつきました。「内閣府設置法」というのがありまして、その一部がこの5月に改正されました。名は体を表すというように、これまでは科学技術政策だけやっていた総合科学技術会議が、イノベーションがついたことによってイノベーション政策まで我々がやることになったわけです。イノベーションという言葉は科学技術基本計画でも第3期ぐらいから入ってきています。法律的には、総合科学技術会議にイノベーションまでやれとは書いてなかったわけですが、必然的にイノベーションに手足をすでに伸ばしてたのが現実で、体に対して顔を合わせたのです。総合調整だけでなく推進機能もやっていくことになりました。

みなさんびっくりするかもしれませんが、科学技術政策とイノベーション政策は内閣府が総括し取りまとめるものだとみなさんは理解していると思うんですけれど、実は法律的には誰が計画を作るかというと文科省が作るんです。文科省が作って出来上がったものを我々がうけて、それをオーソライズしていくのが法律的プロセスなんです。もちろん文科省の中に審議会があって、練られたものを我々が使っていくという形だったんですが、その主体が総合科学技術・イノベーション会議に変わったのです。

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― 「科学技術イノベーション総合戦略」の政治的背景と立ち位置

科学技術基本計画とは別に、「科学技術イノベーション総合戦略」がありますが、これががなぜ別で出てきたかには政治的な背景があります。安倍政権になった時に、「イノベーション」を政権のカラーにしようというねらいがありました。そのために、短期的に、すぐにアクションが取れるネタとなるものが欲しかった。そこで、科学技術基本計画というのがありながら、その計画に上乗せする形で、昨年の13年6月に「科学技術イノベーション総合戦略」というのを我々が作ることになりました。

この「科学技術イノベーション総合戦略」なんですが、科学技術基本計画が1年以上かけて作られるのに対して…、作成にどれぐらい時間をかけたと思います?たった3ヶ月なんです。私がこの総合科学技術会議の常勤議員というポジションに付いたのが13年3月1日からで、就任してから3ヶ月後の6月には戦略を出してたという恐ろしいスケジュールでした。そのための作業は莫大な作業でした。有識者議員は8人いて、常勤は2人なんですけれど、あたまをぼりぼりかきながらただ考えて作ったわけじゃなくて、出来る限りの情報をテーブルに乗っけて、それを精査して、3ヶ月でまとめたという恐ろしい計画で、事務方の人たちもバタバタ倒れたりして大変だったんですけれど(笑)。でもそれなりにある種のロジックの通ったものを作ることができました。

みなさんが疑問に思うのは、この「科学技術イノベーション総合戦略」と「科学技術基本計画」の位置づけはどうなっているんだということだと思います。我々も作りながら、どうなるんだ?と考えながらやっています。総合戦略は基本的に、すぐにアクションが取れるものであり、6月に作って次年度の予算編成に使うのが元々の目的でした。年度の予算は1年間のものであって、長期的なものではありませんが、すぐ何をやるかを決めるときには基本的な方針が合った上で決めるのと、方針がなしで行き当たりばったり的に決めるのではどっちがいいかというと、方針が合ったほうがいいですよね。基本計画が5年のレンジで作られているので、その中の流れを決めて、その中で特に何をするかが焦点になりました。

― 科学技術基本計画、5年のレンジは長い?短い?

ところでみなさんは、科学技術政策を考えた時、5年間ってレンジは長いと思いますか?(聴衆に質問)「短い」ですか?なぜそう思います?…短いとも長いとも、両方に取れると思うんですよね。「短い」と感じるのは、研究に投資した時に、5年で成果がすぐに出ない事が多いし、5年でなく10年…と見ていかなければいけないから。そういう意味では5年は短いんですよね。逆に「長い」と思う人はいますか?「長い」と感じるのは、これにはもうひとつの見方があって、これは分野によって違いますけれど、ある分野では世界中の研究者がしのぎを削って競争していて、あっという間に新しい論文が出てトレンドも変わっていくので、5年間は結構長いっていう意見もあると思うんです。5年も先を読みながら計画をしても、その時点では予想もしなかった分野がその間に主役になる可能性もあるし、今重要だと思うことが大したことないことになってしまうかもしれない。

5年って短いかもしれないし、長いかもしれない。だから、我々が考えなければいけないのは、5年間の計画を作ったあとにドラスティックに何か社会や研究動向が変わった場合に、それに適応できるような計画にしておかなければならないということ。それが今後の第5期の計画を作る上で考えなければいけないことだと思います。

― 「イノベーション」をどう捉えるか?

一応ウェブページにも載せていますが、これが昨年度の6月に作ったイノベーション総合戦略の骨子です(スライド)。一番気持ちを込めたのが第1章でして、今までの役所の文章にはこういうのってなかったんですけれど、総合戦略の基本的な考え方を議論して入れまして、それを言った上で、じゃあ何をするか?という構成になっています。

第4期基本計画は「社会的な課題」という、課題解決型のプランになっていて、「グリーン・イノベーション」とか「ライフ・イノベーション」などの課題が入っています。それを今後も総合戦略の中で継承していくのは確かなんですが、総合戦略の中の初めの4つのポイントはどちらかというと安倍政権が大事だと言ってる経済成長からのロジックからきています。我々が総合科学技術会議としてそこに足したのは、東日本大震災からの早期復興再生です。科学技術がそこに貢献できるんじゃないかという視点があります。と同時に、社会的な課題にターゲットを絞るのとは平行して、基盤的な部分で「環境整備」というのも3章に入れてあります。イノベーションを起こすというとき、大きくは「イノベーション」そのものだけではなく、イノベーションの「芽」というものを広く捉えると、それは科学技術そのものの芽ということになりますね。それがシステムとしてちゃんと動いていくか。必ずしも企業的なロジックのイノベーションだけじゃなくて、サイエンスそのものもちゃんと回していく必要があると。もちろんそこからイノベーションに結実させるというのは、何か結果を出すということなんですけれども。

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― 第5期科学技術基本計画の作成スケジュールとアクターたち

さて、第5期計画作成のスケジュールを知るために、前回の第4期計画作成の際のスケジュールを用意しました。これ(スライド)がざくっとした第4期の前回の計画スケジュールなんですが、ここで誰がアクターとして入ってくるかを見てみましょう。まず一番上のレイヤーにいるアクターは当然総合科学技術・イノベーション会議なんですが、その下にいろんな省庁がアクターとして存在しています。文科省、経産省、関係各省と。それからさらに大きなブロックとして、学術会議と経団連が入ってきます。このように、それぞれの大きなブロックとしてのアクターが、それぞれの組織の中でいろいろな議論をしてくださっています。計画の作成がこのスケジュール感で進むことを知った上で、各組織が自分たちの思いや考えをインプットとして入れるための作業をなさっていて、それがフォーマルな形でレポートして上がってきます。

ですがフォーマルな形のレポート以外に、なかなか今日のイベントのように、計画のはじめの段階から個人ベースで誰かが計画に対して意見をいうケースってのが実はほとんどありません。そういう意味で、この試みは重要だと思います。と同時に、計画作成のプロセスの中にはパブリックコメントというのは必ず入ってきます。計画を作り終わったで、数週間オープンにしてコメントなり議論なりをしていただくんですけれども、それも、もうある程度計画の形ができたあとなので、そうじゃない形で、計画の前段階からあらかじめ議論をするのは大事だと思っています。

今回、第5期計画作成に向けての流れとしては、まずは第4期のフォローアップ調査があって、それをまとめたものをベースに議論をはじめて、新しい専門調査会を立ち上げます。その前段階での第4期計画のレビューの仕方も工夫して、これからオープンな形でいろんな形でいろんな方のインプットを頂きたいと思っています。また国内の視点だけではなく、ベンチマーキングとして、国外の視点や、日本と海外との関係も盛り込んでいきたいと思っています。

― 第4期レビューにあたっての仮説立ての試み

また、今回は第4期計画のレビューをするにあたって、レビューの仕方も変えました。このひとつのミソがですね、今回はどこに今の問題があるか、ある程度仮説を立てて調査委をしているんです。通常は、第4期の中で「こういう政策をしました」というリストがあって、それにどんなふうにお金をつけて、誰が何をやったか、それでどういう結果が出たのかをチェックするわけですね。それでよく「電話帳」って言われるぶ厚い書類ができるんですけれど、誰もそんな分厚い電話帳は全部読まないから、せっかくのレビューをなかなか役に立てるのが難しいっていうのがあるんです。今回はもちろんそれと同じレビューもやるんですが、それと同時に、どこに問題があるのかある程度仮説を立ててみたんです。「第4期は計画に従ってこうしてみたんだけれど、実感としてこのあたりが抑えきれてなかったんじゃないか?」「こうなることを想定してやったんだけれど、想定通りに行かなかったのはなぜなんだろうか?」という形で。大きなブロックとして何が第4期で出てきた課題だったのかを我々の中で抽出してみました。

大きくいうと、どちらかと言うとシステムの話なんですが、2つの大きなカテゴリーがあります。ひとつはイノベーションの芽を作ってシステムを回す、という話。もう一つは、イノベーションのための基盤的能力を作る、という話。たとえば、「女性の研究者が少ない」という課題があった時、女性の研究者をサポートするシステムとして、A、B、Cをやったとすると、それで結果が出たとしても、そもそもその結果が全体としてどういう効果を生み出しているのか。ものによっては、計画とは相反する結果も出てくるわけなんです。そういう意味で、計画が実行された結果として全体の最適化が本当に出来ているんだろうかという視点から疑問を立てて、それを元に検証をしていくというやり方を取っています。

後もうひとつの視点として、日本がたとえ止まっていたとしても世界は動いているわけなんです。世界の動きに対してある程度の対応ができるようなものになっているのかも見なければいけない。

3番目の視点として、第4期と第3期では内容が大きく変わっていまして、第3期ではどの分野を重点化するかを主として作られていたところから、第4期では課題解決型の計画になったと。それが結果としてどういう意味をもたらしているのか、みなさんにもぜひここで議論していただきたいですね。課題解決を趣旨としたことで、プラスの効果があったかもしれないし、逆に予測もしなかったことが起こっているかもしれない。そのあたりを見て行きたいと思っています。今調査をしてちょうどまとめているところで、この会場の参加者にもまとめに携わっている方が一人入っていますけれど、夏休み前には何らかの形でレポートが来ることを期待しています。

その中で、国内の議論のみならず、やはり他の国で何をしているかをチェックしています。分析もこれから出てくると思います。海外のケースを見ていると、科学技術イノベーション計画の作り込みのしかた、作り込みのプロセス、誰が作っているのか、方向性、プログラム設計の原理など、いろいろ見るべき点がありますが、みなさんお気づきのように日本の科学技術政策の方向性はアメリカ、イギリス、フランス、そして欧州連合と、結構同じようなことをしていることに気づくと思うんですね。ベンチマーキングしているから、みんなが真似っ子して同じになっちゃってるところもあると思うし、やはり方向性としてそれぞれの国の国民が似たようなことを要求していることもあると思う。そのあたりの分析もしなければいけないと思います。

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― サイエンストークスの参加者に期待したいこと

今日のサイエンストークス・バーで私が一番求めているのはみなさんのフレッシュなアイディアです。アイディアも、できるかぎり具体的に落とし込めるようなアイディアを出していただけると嬉しいです。もちろんすべてを第5期計画に盛り込むことはできないですけれど、インスパイアさせていただければありがたいし、これを機会にいろんなところでインタラクションさせていただければ幸せですので、よろしくおねがいいたします。

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原山優子常勤議員のプレゼン、いかがでしたか?

次回は第5期へのアイディアを各グループごとに発表してもらいます。

サイエンストークスの草の根的・研究者からの第5期へのアイディア集め活動、総合科学技術・イノベーション会議の皆さん、原山議員も、黙認・応援(?)してくださっている模様。現場・若手の声を反映したボトムアップ的な計画への提言をしていくだけでなく、同じように研究者、大学、企業、学会、それぞれが国の科学技術の振興に対する当事者意識を持ち、自分たちの持ち場でできることを模索していく、そのコミュニティを作ることが、この企画の趣旨でもあります。皆さんのご意見・アイディア、おまちしています。

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