財務省の中から見た日本の国家予算の位置づけ

財務省の中の人、神田眞人氏との対談(1)

財務省の中から見た日本の国家予算の位置づけ

 

10月19日に迫ったScience Talks第1回シンポジウム。今回のシンポジウム「ニッポンの研究力を考える~未来のために今、研究費をどう使うか」の面白さは、研究者、政府、政策関係者など、研究費の当事者であるさまざまな立場の人が個人としての立場から議論に参加する点です。
今回のプレゼン・セッションの登壇者の1人、神田眞人氏はまさに国家予算決定に携わる「財務省の中の人」。今回、Science Talks委員会副委員長の湯浅との対談に時間を割いていただきました。あくまで一個人として、財務省の内側から見た日本の研究の現状をうかがいました。3回シリーズでお届けします。

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【湯浅】 神田さん、今回はまことにお忙しい中、私たちが主催するScience Talks(サイエンストークス)第1回シンポジウム、「ニッポンの研究力を考える~未来のために今、研究費をどう使うか」にご参加を決めていただきまして誠にありがとうございます。激務の中、事前インタビューも受けていただきまして恐縮です。

【神田】 いえいえ。

【湯浅】 今回のシンポジウムのテーマは「未来のために今、研究費をどう使うか」です

Science Talksでは、ニッポンの研究を元気にするアイディアを考えていく企画ですが、その中でも今、研究にまつわるあらゆる問題の核として出てくるのが日本の研究力と研究費の問題です。

研究費と一口で言ってもさまざまな問題に分けられますが、多くの方がまず疑問に思っているのは、そもそも現代の日本の国家において、科学研究がどう位置づけられていて、どれだけ国の根幹として重要視されいるのか、そして国家としてどういう方針で科学技術予算が決められ、今後変化していくのかという点だと思います。単純に、バブル崩壊後、長引く不況に続く震災など財政困難を抱える日本で、公的な研究費はこれからどのような未来を迎えるのでしょうか?

財務省の内側にいる神田さん一個人として、率直な意見を聞かせてください。

【神田】 個人的には、科学技術の重要性は、人類共同体の知的進化への貢献に加え、最近では国民経済発展の基礎としても強く認識しています。

しかし、我が国の財政は、債務残高がGDPの2倍以上と古今東西未曾有の最悪の水準に達し、毎年の歳出も税収では半分しか賄えず、その税収も国債の元利払いと社会保障で瞬間蒸発してしまい、科学技術予算は全て子孫の借金で維持しているといっても過言でない惨状です。

にもかかわらず、平成に入って科学技術振興予算を3倍にするなど、相当、無理をしてきましたが、国力的に限界に達しています。優先順位づけや成果の説明責任を果たさないと国民の理解を調達することも難しいでしょう。

【湯浅】 さらに東日本大震災以後、国家財政はさらに危機的状況にありますよね。消費税増税の問題もあり、国民の税金の使い方への目もますます厳しくなることが予想されます。

【神田】 論文捏造スキャンダルを許さないことも必須です。政府研究費は、量的には、背伸びをしながら先進国ではGDP比で2%と既に最高水準なので、問題は配分や執行のあり方にあると考えており、工夫を重ねて、一層、研究の質を向上させていくべきであって、競争的資金の変革・充実や、必要な規律は守りながらも使い勝手を改善する制度改革等、様々な試みを展開しているところです。

【湯浅】 なるほど。政府研究費を増やすのではなく、配分の仕方や使い方を工夫してコストパフォーマンスを上げることが今の時代に必要な施策であるということですね。

※こちらの対談は財務省とかかわりなく一個人としてのご意見をお伺いしています。

神田眞人氏との対談(2)≫

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