日本は研究で中国の勢いにどう立ち向かう?

財務省の中の人、神田眞人氏との対話(2)

日本は研究で中国の勢いにどう立ち向かう?
神田眞人氏インタビューシリーズ2回目。
Science Talks委員会副委員長の湯浅との対談を通して、一個人として、財務省の内側から見た日本の研究の現状をうかがっています。
今回は経済成長のみならず、研究開発においても発展目覚しい中国に対抗するための日本の取り組みについてのお話です。

【湯浅】 前回のお話では、逼迫する日本の国家財政の中でも日本は2%という高水準の科学技術予算を維持しており、国家の中での科学技術、学術発展への重要性は変わらないながらも、国力の限界のなかで配分した予算をいかに使うかが課題であるというお考えを理解しました。

ところで、今世界中の研究主要国にとっての脅威と課題は、経済成長の著しい中国とどう基礎研究や科学技術開発で張り合っていくかだと思います。単純に論文数だけ見ても、過去10年の中国の研究力の伸びはすさまじく、他国を追い越して驚異的なスピードでアメリカの水準に追いつこうとしています。日本と中国では経済成長率では今比較できないほど開きが生まれている中で、大量に研究資金を投下して世界に挑む中国に、日本はどうやって対抗していくべきなのでしょうか?

【神田】 年率8%近い成長を続け、財政も、シャドーバンキング問題等があるものの、我が国より遥かに健全な中国と量で対抗することは今後、一層困難になるでしょう。

【湯浅】 なるほど。

【神田】 しかし、中国の強さはむしろ、国際化、つまり、大量に欧米に留学し、祖国に戻り、自国の国際的な研究教育環境を拡大再生産していくところにもあり、我が国も国際競争力のある柔軟で開かれた研究労働市場を形成しなければ取り残されます。

【湯浅】 つまり、研究への投資額の違いだけじゃないと。中国は研究の国際化も進んでいて、それが成長の原動力になっているということでしょうか。

【神田】 ええ。欧米のみならず中国を含め、日本人研究者の国際共同研究が増えていることは望ましい兆候です。もっと外国人や実務家が入り乱れて協力し合う多様で活力のある研究環境を形成したいところです。

【湯浅】 もっと日本は国際化が必要だと。それ以外に、具体的に日本という国全体の研究パフォーマンスをあげていく仕組みを作るにはどうしたらいいのでしょうか?

【神田】 限られたリソースを最も有効に活用すべく、健全な競争環境を形成し、能力と志のある研究者に集中投資して国際競争に打ち勝つと共に、そうでない方々に頑張らないといけないインセンティヴを供給することです。

【湯浅】 実力のある研究者が勝ちあがれる仕組みですね。

【神田】 そのために重要なのは適切な優先順位付の裏付けとなる評価制度の確立です。学問が専門化、細分化される中、少なからずの論文がレレバンスを喪失する一方、細分化された蛸壺が封建的に併存し、相互内政不干渉のようになっては駄目で、全体としての優先順位を横串でつけられるような制度が求められています。

特に、成果の説明責任は他分野に比べると余りに弱く、抜本的な強化が必要とされ、ニューマネーともよりリンクされていくことになるでしょう。

※こちらの対談は財務省とかかわりなく一個人としてのご意見をお伺いしています。

神田眞人氏との対談(3)≫

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