「けっこう提言を反映していただいてるっぽい?実際の「第5期科学技術基本計画」を見てみよう」〜勝手に「第5期科学技術基本計画」編集部反省会(第4話)〜

「けっこう提言を反映していただいてるっぽい?実際の「第5期科学技術基本計画」を見てみよう」〜勝手に「第5期科学技術基本計画」編集部反省会(第4話)〜


2016年1月22日に閣議決定され、すでに施行が開始された政府の第5期科学技術基本計画。当然気になるのが、「僕らの提案、少しは盛り込んでくれてるのか?」という疑問。そこで、サイエンストークスの小山田和仁さん、嶋田一義さん、湯浅誠さんの3名が集結。政府の答申案をサイエンストークスの提案内容と比較しながら、日本の科学技術の今のこれからについてじっくり語りました。

(収録は2016年1月、政府の答申案を資料として利用しています。)

けっこう提言を反映していただいてるっぽい? 実際の「第5期科学技術基本計画」を見てみよう

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湯浅 さて、みんなで勝手に作っちゃったサイエンストークス版「第5期科学技術基本計画」提案書がここにあるんですが、去年の3月26日にCSTIの勉強会に呼んでいただいて実際に第5期科学技術基本計画を作成している皆さんの前でアイディアをプレゼンしました。
その後、 実際我々が出した提案の中のどれぐらいが反映されたのか、みなさん興味あるんじゃないかと思うんですね。そこで、最終版の第5期計画と我々の提案を比較しながら見てみたいなと思うんですけど。

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ちなみにサイエンストークスの提言プレゼン資料はこちら↓

↓ ↓ ↓

政府で閣議決定された第5期科学技術基本計画の本文はこちら

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小山田 実際、第5期計画を読んでみると、けっこう我々のネタを取り入れてくれたという印象がありますよね。
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湯浅 そうなんですよね。まず今回の政府の第5期計画の背景になっている問題意識から見ていきましょうか。
ざっくり見てみると、日本の論文の質的、量的な停滞であったり、イノベーションが起きにくい状況であること、博士課程に進みたい若い学生が減っていること、産学連携進んでないよね、科学者や技術者に対する信頼が失われているよね、というあたり問題意識として挙げられていますね。
我々がサイエンストークスの提案書を通じて伝えたかった、研究コミュニティの信頼を取り戻して若手の活躍の場所を作りたい、という思いとオーバーラップしていると思いますがどうでしょう。
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小山田 第5期計画に書かれている政府の問題意識は、今までの流れとはかなり違ったものになっていると感じます。科学技術基本計画の過去20年を振り返ると科学技術基本法が出来てから、5ヶ年計画を4回繰り返して20年を経ています。
今回の第5期計画が今までのペースとちょっと違うのは、今まではどちらかというと「日本はまだまだ大丈夫ですよ〜」という感じで書かれていましたが、今回の書きぶりでは危機感がかなり強い。日本の科学技術についてかなり強い危機感、危機意識があります。新興国の追い上げや他の国の伸びと比較すると、日本の基盤的な力、研究力が急激に弱まってる。
「急激に弱まってる」と第5期計画に明確に書かれていますが、この言葉は結構強い言い方です。論文数の話でいうと質、量ともに世界ランキングの中では停滞してきているし、国際的な研究ネットワークにおける日本の研究者のプレゼンスも弱くなってる。
若手問題に関してはずっと問題視されています。まさにがけっぷち、最終段階に来ているという認識ですよね。そして近年「科学への信頼の低下」という問題まで加わってしまった。 これらはこの過去5年間の中で持ち上がってきた問題ですね。
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湯浅 大学の国際ランキングなんかも、あるランキングでは最近メトリックが変わったことで、日本の大学のランキングはガタ落ちになりましたよね。
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小山田 大学ランキングにはいろんな種類があってそれぞれ特徴あるんですが、どの種類を見ても日本が飛び抜けて最近ランキングが上がってますか?と言ったら、誰もそれには合意しないわけです。存在感が低下してきているというのは間違いない。
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湯浅 今の日本の科学技術で問題視されているのは、ごく根本的な土台なんですよね。 これはさすがになんとかしないとまずいというのは、研究者の皆さんも科学政策側の皆さんも、共通で認識してる。
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小山田 この手の政府の文章で「伸び悩んでいる」とか「急速に弱まっている」とか、強い表現を使うことはあまりないんです。それだけ危機感が強いということを表していると思いますね。
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湯浅 第5期計画では基本方針として、以下の4つの柱があります。1つ目は「未来の産業創造と社会変革」。2つ目は「経済・社会的課題への対応]」、そして3つ目が、科学技術イノベーションの「基盤的な力の強化」。最後にイノベーション創出に向けた「人材、知、資金の好循環システムの構築」となっています。
この4つのテーマだけを読んだだけではどういう話をしているのかというのがよくわからないと思うんですが、要所要所をちゃんと読み込むと、我々が提案した内容をかなり反映していただいているんじゃないかという印象がありますけど、いかがですか?
たとえば9ページ目に「やはりこのままだと日本の科学技術は八方ふさがりなので、そろそろ全体のシステムを変えるゲームチェンジが必要じゃないか」みたいな下りがありますよね。
我々サイエンストークスでも今年は「ゲームチェンジ」というテーマで、実際にまさにこれから日本の研究を大きく変えるようなゲームチェンジをしていく人を募集して応援しましょうという目標を掲げていたので、このあたりは偶然というか必然というか、発想が似ているのかなと思うんですがどうですか?
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小山田 CSTIが掲げた4つの柱の中で、1の柱は第2章のところにあたります。社会や経済や技術が大きく変わってきてる、その中で、従来のビジネスの仕方とか、社会のあり方というのが大きく変化してる。
これまでのやり方を変えるような技術ややり方をどんどん生み出す必要があるし、自分たちの力で生み出さないといけない、という意味でゲームチェンジという意味を使っていると思いますね。
僕らがサイエンストークスで打ち出した「ゲームチェンジ」には2つの意味がありました。社会や物事を変えていくという意味、そしてこれまでの 科学、研究のやり方を変えていくという意味。
CSTIが第5期の第2章で掲げた「ゲームチェンジ」はどちらかというと社会を変えていかないといけないという意味だと思います。しかしその社会におけるゲームチェンジを生み出すためには、今まで僕らがやっていたやり方自体を変えなくてはいけないという意味では、目指すところは同じだと思います。
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湯浅 なるほど、そうですね。あと第4章の「科学技術イノベーションの基盤的な力」という章なんですが、ここでは「人材」が1つのキーワードになっていて、まさに「人材の強化」、「科学技術イノベーション担うのは人である」と書かれていますよね。
ここの部分はもうまさに我々がサイエンストークス版の提言で強く語っている「人の顔が見える科学」というところとぴったり一致すると思うんですが。過去の第1期から第4期までの基本計画ではこの部分って強調されていましたっけ?
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小山田 そうですねえ。いまの部分についてちょっと引いた言い方をすると、「科学技術イノベーションの基盤的な力の強化」を語った第4章は、いわゆる昔の言葉でいうと「システム改革」の部分にあたります。研究開発システムをどう変えていくかという課題に対して、その要素に人、金、箱(大規模研究施設)という3要素があるわけです。 そういう意味では、「人」という側面は科学技術基本計画には昔から入っている要素であったと思います。
ただ第5期ではそれを一番に持ってきているというところに重要なメッセージがあると思います。最初に「人材の強化」とあって、「科学技術イノベーションを担うのは人である」、これを一番軸として持ってきている。
その次に「プロフェッショナル人材の育成の確保」について、そして「若手研究者に活躍してほしいという部分があります。さらに計画には 科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成活躍促進というのは単にプレーヤーとしての研究者だけじゃなくて、それを支えるマネジメント人材であるとか、その成果を社会に展開していくような人材、そういう人材も含めた一体として考えていく必要があるということが語られていますよね。
そういう意味で言えば、我々サイエンストークスでは「人の多様化」、「人が活躍できる組織作り」を提案していますし、「人の評価の多様性」として研究者が研究に専念するためのサポート人材の強化という部分も明確に提案しています。こうしてみると、サイエンストークスが提案した内容に即した要素が入っているという印象がありますね。
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湯浅 実際、我々の提案書からこのキーワードを拾ってくれたかどうか知りたいですよね。わからないもんですかね?
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小山田 それはわかりません(笑)。©サイエンストークスって書いてあるわけないですからね。
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湯浅 第5期科学技術基本計画にはあれ入れてもらいたいですね。リファレンス番号。ここはサイエンストークス提案書を参照、って。
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小山田 残念ながらありませんね。
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湯浅 我々が作った提言書は、CSTIの委員の方々や事務局の方々に事前にお送りしましたし、CSTIの勉強会でプレゼンもさせていただきましたので、けっこう中にいらっしゃる方々は読まれてるはず。少なからず参考にしていただいているんじゃないかと思いますけれど…。
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小山田 僕の印象では、どちらかというと、僕らの提案書から直接文章や言葉を引用してくれているというよりは、 マインドセットや考え方のフレームに少しは影響を与えられたのかなと。僕らの考え方を組み込んでもらえてるようだな、と感じますね。
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