オープンアクセス夜話(第9話)紙媒体の科学雑誌は“悪”!?

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研究者 V.S. 学術情報流通のプロによるオープンアクセス談義、第9話はちょっと過激な意見が登場します。それは紙媒体の科学雑誌は税金の無駄遣い以外何者でもない、だから購読を制限するべきだ、というもの。アンチ紙ジャーナルを貫く宮川氏に対して、林氏は紙ジャーナルが存在する意義もあると語る。あなたはどっちに賛同しますか?

いよいよ白熱化してきましたクロストーク、今始まります。
※聞き手:湯浅誠

<これまでのお話>

 

第9話 紙媒体の科学雑誌は“悪”!?

湯浅 宮川さんは以前、オープンアクセスジャーナルを普及させるため、「公費による紙媒体の科学雑誌の購読制限」という案を提案されていましたが、このご意見はかなり過激なご意見だとは思います…。こちらについて伺っても宜しいですか?

宮川 これは多分、世界ではやっているところはないんじゃないでしょうか。

 かなり斬新ですね。

宮川 ようするに、これを提案することで何を言いたいかというと、紙媒体というものが存在すること自体が悪なんですよね。

 (笑)

湯浅 (笑)

宮川 ふふふ。これは言い切って問題ないと思うんですけれども、紙媒体のジャーナルはもう存在しない方がいいんですよ。紙媒体のジャーナルに縛られて電子化することののメリットが生かされていない部分がありますし、その足を引っ張るぐらいだったら紙媒体はよっぽどな雑誌じゃない限りはもう、公費つかって投稿しちゃだめ。納税者目線では僕はそれを言いたい。そもそも、全然読まれていない紙の雑誌が図書館にいっぱいあるわけですよね。全然開かれてもないような雑誌がいっぱいあると思う。それ、税金で買ってますからね。納税者として、非常に不愉快ですよ。紙媒体のジャーナルが存在するから無駄なお金がかかるしスペースもとる。図書館の人が製本や整理する必要があるので人件費がかかるわけですよね。紙媒体さえなくしてしまえば、もう何重にもいいことがある。紙媒体は悪です、悪。

 (笑)

宮川 (笑)大学が自分でお金を捻出して紙雑誌を購入・管理するんであれば別に何にも言わないですよ。大学が授業料から出しているんだったら別に何も言わないですよ、納税者は。

 いや、大学図書館をフォローすると、2000年代前半くらいから学内で重複購入しているジャーナルは減らしましょうという努力を続けてきていますよ。それはかなり進みました。今はシェアド・プリント(Shared Print)っていう議論が進んでいて、大学の中で同じジャーナルは一冊か二冊くらいあればいいから、必要に応じて共有しようという動きが始まっています。

宮川 でもそれ、学内といえどちょっと遠いところに見たい雑誌が置いてあって、宅配便で取り寄せなきゃいけないとしたらあんまり意味がないんですよね。そもそも紙媒体のジャーナルが存在する意義って、暇なときにお茶でも飲みながら「どんな研究があるかなー」とペラペラってやるのが一番の意義ですからね。だから手元にすぐないとしょうがないんですよね。学内に一冊あるだけじゃしょうがない。ネイチャーとかは各研究室にありますよね。

 うーん…。

まあ、つまりはジャーナルも二極化すると思うんですよね。オープンアクセス誌は紙媒体にしづらいので、ネイチャーのようなトップジャーナルは今までどおり購読費モデルでやれるんじゃないでしょうか。紙ジャーナルであっても購入して読みたいと思う人のニーズが高いし。

「公的資金を投入した購読誌に関しては紙媒体を減らしてオープンアクセスにしろ」、というご意見が宮川先生のような研究者から発信されたことがすごく面白いですね。今までは研究者の方はむしろ、例えば医学系なんかだと論文に掲載した写真やイメージの再現性を重視する場合には冊子で見たいという方もいらっしゃいますしね。

宮川 解像度の高い写真をウェブに上げるほうが紙に印刷した写真より再現性はたかいんじゃないですか?

湯浅 宮川先生のご提案は面白い試みになると思いますけれど、これ、いったい誰がどの機関がやるのか、国でやるとしてもどこがイニシアチブをとってできるんだろうっていうのが、ちょっとお話を聞いていて私の中ではあまり明確でないんですよね。

宮川 JST(科学技術振興機構)とかじゃないでしょうか。事務局を作ってお金を取ってくるとか・・・。それでネイチャーとかセルとか、そういう所の編集者をやっていた人を引き抜いてくるってのはアリだと思いますね。ProsOneだってもともとセルをやっていた人が立ち上げてやっているんで、そういう経験のある人を優秀な編集者を引き抜いて事務局に入ってもらうとかね。

湯浅 何はともあれ、ジャーナルを作るのであればプロモーションもしっかりやって研究者が魅力的と感じるプラットフォームをまず作らないといけないですよね。

宮川 そうですね。

そもそも紙媒体の科学雑誌が存在する意味はないという意見が出ていますが、大勢の研究者からしてみれば紙の雑誌は馴染みがあるもの。果たして主流の紙ジャーナルを制限することでオープンアクセスジャーナルへの移行がスムーズに進むのか、という疑問もあります。やはり林氏の提言通り、最善の策は紙と電子媒体の共存であるのか?更に大事なのは、一体誰が実行するのか、という問題。次回で最終回、変革の担い手について語らいます。乞うご期待!