【開催まで残り5日】Science Talks設立趣意書をアップ!3

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いよいよ今週末10月18日(土)に開催されるScience Talks第1回シンポジウム。開催に先立って、Science Talks委員会メンバーは設立趣意書を作成しました。
以下、Science Talksの設立趣意書です。

 


Science Talks設立趣意書
2013年9月
Science Talks実行委員会
戦後、世界トップレベルの水準に達した日本の科学研究を取り巻く環境は、今大きな転換点を迎えています。情報化とグローバル化の進展により世界の研究開発のスピードと規模は爆発的に拡大しており、欧米だけでなく、中国や韓国、シンガポールなどの新興国の研究力も急速に伸び、分野によっては日本の研究力をしのいでいます。その一方で、この10年の日本の研究者による発表論文数の伸び率は、論文総数とTOP10%論文数、つまり量と質の両方で、他の研究主要国の伸びと比べて低い水準でとどまっています。
今、研究に携わる多くの人が、「ニッポンの研究力、本当にこのままでいいのだろうか?」という漠然とした不安を感じています。バブル崩壊後の不況と経済危機の中でも、1995年の科学技術基本法の成立以降、日本は厳しい財政状況にもかかわらず科学技術立国として科学研究に対する公的な支援を守り、維持してきました。その根底には資源の乏しい日本だからこそ科学技術の研究開発、ものづくりで世界をリードしていくんだという強い共通認識があったからです。それから20年近くたった今、どうもその基盤が揺らいでいるように見えてなりません。
多発する研究費の不適切な使用や不正流用、後を絶たない研究者による論文データ改ざん、ポスドク就職難民問題、大学の国際化への対応の遅れや、研究者の研究時間の低下、そして広がる大学間格差。なんだかおかしい、何かがうまくいっていない。そう漠然と感じながらも、私たちの多くは複雑に絡み合った問題の全貌を捉えかねています。何が問題なのかわからない、もやもやした時代です。問題は山積みですが、それよりも私たちの不安の根底にあるのは、日本の研究がこれからよくなっていくことを夢見る、みんなで共有できる未来のビジョンの欠落かもしれません。
もちろん過去20年の日本の研究は暗いニュースばかりではありません。1995年以降、日本は11名ものノーベル賞受賞者を輩出しており、産業技術だけでなく基礎研究に強い国としての認知度を少しずつ上げています。賞や数字に表れなくても、現場に立ち戻れば限られた資金や人材、研究環境の中でもたくさんの日本の研究者が新しい知識と技術の発見に情熱を燃やし、試行錯誤しています。
そんな一人ひとりの研究者の元気とパワーをどうやったらもっともっと引き出し、日本の研究を本当の意味で活性化させられるのでしょうか。元気はどこかから与えられるものではありません。「変えたい」と思う当事者である私たち自身が、よりたくさんの現場の人たちと問題意識を共有して議論し、アイディアを出し合って、個人の研究者、大学・研究所、学協会、国それぞれの立場からできることを少しずつ実践しつつ作り上げていくことが、日本の研究力を底上げする一番の方法なのではないかと考えます。そのためには、本当に日本の研究をよくしたいと考えているあらゆる分野の専門家と当事者それぞれが、現在直面している課題や、長年にわたって蓄積されてきた制度的な弊害や慣習を恐れずにオープンに話し合える場、そして問題を乗り越えるために研究者、その運営、支援に携わる人々、そして制度を作る人々など、自分とは違った立場と視点を持つ人たちとつながりあって面白いアイディアや実践例を紹介しあい、意見を交換しあう対話の場を作ることからはじめる必要があると考えました。
Science Talksは以下のような場となることを目指します。
1) 出入り自由。日本の研究を元気にしたい!変えたい!と強く願うあらゆる人が立場を超えて、個人として参加し、自由でオープンに議論。
2) 発言自由。「どうせ変わらない」「こんなタブーを発言しちゃまずい」なんて気にせず何でも思ったことを話して問題意識を共有してください
3) お持ち帰り自由。面白いアイディアや実践例をどんどん共有してください。ひとつの正しい答えや方針を決めるのではなくたくさんのよいアイディアをお持ち帰りする場です。
4) 立場や慣習からの自由。ポジショントークはやめましょう。研究者も政策関係者もサポーターも、一人ひとりが自分のおかれた立場を超えて、立体的・多角的な視点からものを考えられるようになることが目標です。
5) ネットワーキング自由。多様なメンバーとつながりあい、自由にコラボしてください。集まった人たちがお互いに学びあい、それぞれの持ち場に帰って研究力の向上にむけて実験的・野心的なとりくみをを行うきっかけになる場、そして実践や新しいアイディアををさらに情報共有することで元気を継続的にジェネレートする好循環をつくります。
6) 具体的アクションへの取組自由。いい取り組みや新しい政策やシステム改革のアイディアが出てきたら、コミュニティの中から有志が自然に集まって実験的な取組や改革、政策提言など具体的な取組につなげていきます。
7) 自由な情報発信。研究や科学に元気を取り戻すためのさまざまな試みや活動をオープンに配信していくことで、社会からの科学研究への関心と支持をとりもどしていきます。
研究は本来、先人達の残した蓄積を元に無から有を生み出して、常にフロンティアを開拓していくという、本当の意味での創造的な活動です。Science Talks有志は、日本がいい研究をしたい人が世界中から自然と集まる、創造的な研究活動を行うための地球上で最も適切な場所になることを目指しています。みなさんのアイディアを聞かせてください。

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