AAAS 国際部長 トレキアン氏特別インタビュー! 第2回 科学と政策の境界戦とAAASの役目

AAAS(アメリカ科学振興協会/通称トリプルエーエス)の国際部長トレキアン氏へのインタビューシリーズ。第2回目はAAASの社会的役割についてお話いただきました。

サイエンス誌の発行元と知られるAAASですが、その活動の本命のひとつは科学コミュニティと一般社会、行政をつなぐこと。科学力と国の発展のために異なる社会集団、及び他分野の学問領域をつなぐことの重要性を語っていただきました。

第2回 科学と政策の境界戦とAAASの役目

湯浅 本日のGRIPSセミナーで科学と制度の境界線とAAASの役割について話していただきましたね?AAASの役割について、もう一度軽く説明いただけますか?

トレキアン氏 今日行ったセミナーは科学コミュニティと一般社会との接点のことを考えている現地メンバーと話す良い機会となりました。科学コミュニティと公共は大抵の場合、片方の依存によって成立しているわけではありません。科学者は公共と広く接し、情報を交換する経験に欠けることが多い一方、公共はしばしば科学者を敬遠的に見ています。そういう意味ではAAASのような組織こそが両者を繋げる最も効果的で大切な存在になりうると感じます。AAASは更に科学関係者と政策担当者を繋げる組織でもあるんです。

湯浅 なるほど。つまりAAASは科学者、公共、政策担当者の仲介を担っているわけですね。この役割を通して相互の理解を深め、優先的に取り組む事項を検討しているわけですか。

トレキアン氏 そうですね、それに加え政策担当コミュニティと科学コミュニティ双方に有益な科学的な取り組みを主張していくことですね。組織のPolicy fellowship Programでは政策関係に詳しい科学者の総数を増やし、彼らを両コミュニティの仲介役として活用する、という形で活動を進めています。

湯浅 日本でも政策関係に詳しい科学者の欠員が問題視されています。

トレキアン氏 講演の最後にアメリカの科学コミュニティと世界の科学コミュニティの間の繋がりを構築するAAASの役割について言及しましたね。科学研究は世界中で加速しており、多くの国々が科学への投資額を増やしています。アメリカは確かに最先端を走る科学技術国家であり、投資額も他国と比肩しても飛びぬけています。しかし国外の科学研究コミュニティと自国のそれを結び付けようという意志は常に働いているため、そのためにAAASが安定した国際プログラムを用意しているんです。

湯浅 はい。

トレキアン氏 AAASは多くの学問領域にわたる組織のため、単一の事業計画に集中するわけではありません。我々が以前に比べて積極的に取り組んでいるのが、異なった学問領域間の接点を見出すことです。そうすることで、科学者が各学問領域の接点において新規の学問を発見しやすくする仕組みができていきます。事実、日々既存の学問領域を超越した分野が誕生しています。この取り組みを推進することで科学コミュニティに、自己の専攻と異なった分野を勉強し、その上で専門性を結合させ、新たな分野を構成するためのプラットフォームを提供することができます。これは対象の科学事業計画の利益になるに留まらず、複数分野にまたがっておきる諸問題の解決につながると感じています。

湯浅 そうですね。

トレキアン氏 具体例を挙げると、エネルギー分野です。エネルギー研究とは単一分野内で存在しません。物理学のみの問題でなければ物質化学やバイオテクノロジーのみでも扱えません。これら全ての学問に関連する問題なのです。今挙げた分野や社会科学等をすべて一括りにまとめる組織が存在することで、新しい考えや研究へ続くアイディアが誕生する助けになります。

湯浅 全体的に説明をいただきありがとうございます。Turekianさんは本日のセミナーで、同様の活動を行っている組織は世の中には存在しないとおっしゃられましたね。

トレキアン氏 厳密に言うと、AAASに類似した活動を行っている組織はあります。しかし、それぞれ当該国の都合によって異なっています。例えば、ブラジルにはSBPCという組織がありますが、活動形式はAAASに似ているものの、AAASとは少し違います。同様に中国にChina Association for Science and Technologyというのもありますが、国の事情を踏まえて、わが組織と全く同じとは云い難いですね。インドやヨーロッパ、各地域にこうした組織や連盟は存在しますが、どれも少しずつ差異があります。共通点があるとしたら、一年か半年単位で多数の学問領域の研究者を交えてのミーティングを行っていることです。

湯浅 類似した組織でも、日本にはまだありませんよね?

トレキアン氏 日本はまだ複数の学問出身の研究者が定期的にミーティングを行えるような社会構造が存在しません。他の国でもAAASのような組織体系を築いているところもありますが、重要なのは国や政府の都合や優先事項です。AAASの一つの特徴として、世界中に対してオープンな姿勢を持っていることです。日本にも、世界中の国同様、AAASのメンバーがいますが、日本が国としてAAASに適合する体系を持っているわけではありません。

――組織間、学問領域間のスムーズな連動性が社会全体に与えるインパクト大きさを知った上で、日本でも科学・政府の仲介を担う機能が求められています。現存の社会構造では難しいとされますが、皆さんどのようにお考えですか?
次回はその点に関して踏み込んで議論します。

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