「50%の研究者が年間100万の研究費ももらえない現実 」

熊本大学学長・谷口功氏インタビュー(3)

「50%の研究者が年間100万の研究費ももらえない現実 」
熊本大学が受けている科研費をはじめとする外部資金は、平成24年度の例では、約64億円です。この内訳は、科研費が31億円、寄附金が18億円、共同研究・受託研究等が15億円となっています。現在、教員数約1000人、助手まで入れて1008人ですので、単純平均すればひとりあたま640万円、科研費だけで見れば310万円ということになります。


【谷口】
縁あって、熊本大学・工学部の工業化学科(当時)の安河内一夫先生の研究室の助手として、赴任することになりました。熊本大学の先生方や九州大学の先生方に大変お世話になりました。研究も自由にやらせていただき、多くの優秀な学生に恵まれてすばらしい研究成果も挙げることができたので、今日の自分の姿があると思っています。

熊本大学赴任当初、私が東京で学生時代から研究生活に至るまでお世話になった先生方が、私のことを心配していただいて、熊本に来られた際には私のことを宜しくと頼んでいただきました。東工大の先生方はもとより出身大学ではない東大の先生方までもそうしていただいたお陰で、今の私があります。

【湯浅】 加藤先生とのご縁といい、お話を伺っていると先生は若手のころからとても人に恵まれていらっしゃるなという印象を受けます。というか、先生が研究において人とのつながりを非常に大切にされているという印象ですね。

【谷口】 若い時代から今日に至るまで、私は国内外の多くの先生方や仲間に支援されて研究生活を続けることができたと思っています。全ては多くの方々に助けていただいたお陰であり、全く有り難いことと思っています。多くの方の恩恵に報いるためにも、何としてでも、熊本大学や熊本の発展のために、広くは、地方にある、頑張っている大学(地域中核大学)のために、微力ながら出来る限りの力を尽くしたいと思います。

【湯浅】 谷口先生の熊本大学における経営手腕は有名ですが、今お話をうかがっていて、ご自身が経営する熊本大学のみでなく、今さまざまな問題で苦心淡々としている広く全国の地方大学の発展のために熊本大学が先陣を切ってイノベーションを起こそうとしている情熱がうかがえます。今、地方国立大学の一番の悩みは、年々減少する研究費の問題だと思いますが、今熊本大学が直面している研究費問題を具体的にお話いただけますか?

【谷口】 具体的には、熊本大学が受けている科研費をはじめとする外部資金は、平成24年度の例では、約64億円です。この内訳は、科研費が31億円、寄附金が18億円、共同研究・受託研究等が15億円となっています。現在、教員数約1000人、助手まで入れて1008人ですので、単純平均すればひとりあたま640万円、科研費だけで見れば310万円ということになります。

【湯浅】 64億円というと大きな数字に聞こえますが、ひとり平均310万円というと、配分は分野によって実際には異なるにしても、科学研究では特にずいぶん額が低い印象を受けますね。

【谷口】 もちろん研究費の取得は、大学の中でも特定の方に偏っていますので、25%は1000万円以上の研究費を持っていると思いますが、約25%が平均100~200万円で、50%は100万円も持たない方です。つまり75%の研究者は、研究費に不自由しているか、本当に困っているのではないかと思います。

谷口功氏インタビュー(4)≫

Related post

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議とは?

総合科学技術・イノベーション会議の議員の構成というのは極めて重要です。関連の大臣が入っているので科学技術の政策がいろいろなところで展開され、関連の大臣がみんな入っているということは自ら決めていく。FIRSTは日本が非常に誇るべきシステムです。
日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

日本人の感性と感情にある豊かな言葉をサイエンスで生かすべき

サイエンス分野では日本語でしか発見できないことがたくさんあります。日本人の感性と感情に豊かな言葉があって、実はその中で大発見がうまれてきている。基本的な考え方として、ここを抑えておかないとどんなに政策提言をしても世の中は変わりません。
好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

好奇心と掘り下げ続ける力こそが研究

リバネスのモットーは『科学技術の発展と地球貢献を実現する』。小中高校生への「出前実験教室」を中心に、幅広い事業を手がけている企業、その設立者であり代表取締役CEOをつとめる丸幸弘氏にインタビューさせて頂きました。

返信を残す

あなたのメールアドレスが公開されることはありません. 必須フィールドは、マークされています *